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Wi-Fiでロボットを操作するなら知っておきたいこと~ロボコン参加者の質問を元に考えてみた~

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NTTBPは2017年、日本での開催となったABUロボコンでサポートしたことをきっかけに、以降6大会にわたって「高専ロボコン」「学生ロボコン」の公式フリーWi-Fi提供をお手伝いしています。

また、2023年の学生ロボコン以降学生ボランティアの方に会場内のWi-Fi構築を体験していただいたり、無線技術者によるWi-Fi講座を開催するなど、新しい取り組みもスタートしています。

今まさに新しい挑戦をしようとしている学生からの質問は、芯を捉えたものばかり......私たちも大きな学びをいただきました。今回はその時寄せられた質問から、特にWi-Fiに関連した質問をピックアップしご紹介したいと思います。

ロボコンという競技のみならず、一般的な知識としても非常に有用なものが多いので、普段ロボット操作と関わりがない方もぜひご覧くださいね!

Wi-Fiに関する質問をピックアップ

これまでいただいた数々の質問の中からピックアップしてご紹介します!

Q.電波干渉やDFSの影響を受けにくい周波数帯が知りたいです。

A.DFS具備が義務付けられておらずチャネル数の多い6GHz帯がおすすめです。

6GHz帯は2022年に国内利用が許可されたWi-Fi6Eから利用できる比較的新しい周波数です。非常に広い帯域を利用することができ、20MHz幅のチャネルが24チャネルも利用できます。国内では新しく解放された周波数帯なので利用している機器も少なく、チャネルも空いていて干渉が起きにくいのも嬉しいポイントですね。6GHz帯は屋内専用の周波数帯なので、大会当日の利用は問題ありませんが、練習フィールドが屋外の場合には注意が必要です。

6GHz帯イメージ

チャネルを多く使える6GHz帯のイメージ

また、DFS(Dynamic Frequency Selection)なしで使えることも大きなメリットになります。DFSとは、5Ghz帯(5.2Ghz帯を除く)に具備された機能で、気象レーダー・航空レーダー・船舶レーダーと共用している周波数を使う際、これらの電波との干渉を検知すると、自動的に運用していたチャネルの電波を停止し、別のチャネルに変更するといった機能でしたね。詳しい内容は過去の記事で説明していますので、こちらをご覧ください。

関連リンク:5GHz帯Wi-Fiの屋外利用は禁止って本当? 覚えておきたい「おそとWi-Fi」のルール
https://www.ntt-bp.net/column/blog/2023/04/post-119.html

周波数を共用する以上、DFSは絶対に必要な機能ですが、利用開始までに1分間のスキャンがあったり、干渉を検知するとチャネルが変更になったりしますので、定められた試合時間のあるロボコンでは大きなデメリットになってしまいます。

その点、6GHz帯はDFSなしで利用できます。これらを考慮すると、Wi-Fi6E対応の機器が利用できる場合は、ぜひ積極的に採用したいですね。

関連リンク:Wi-Fi 6E : 無線技術ガイド : NTTBP|NTTブロードバンドプラットフォーム
https://www.ntt-bp.net/product/technical-guide/bp-wi-fi/wi-fi-6e.html

DFSイラスト2

こうならないために大活躍のDFSです

Q.検証のためにわざと「混んでいて電波の悪い状態」を作りたいです。

A.干渉用のアクセスポイントを設置し、複数の接続端末で大容量通信させましょう。

アクセスポイントと端末が接続しているようでも、通信を行っていなければ、電波のやりとりはほとんど行われていません。そのため、干渉用のアクセスポイントを設置したうえで、容量の大きなファイルをダウンロードしたり、重い動画をストリーミング視聴するなど継続したトラフィックを発生させると、わざと「悪い電波環境」を作ることができます。

逆に言えば、同一チャネルに複数設定が重なってしまっていても、通信さえしていなければ、干渉の原因にならないということですね。

日ごろお使いになるようなメッセージの送受信などはほんの一瞬しか通信せず、思ったほど電波環境に影響を与えられないことも多いので、通信が継続するような状況を意図的に作り出してみてくださいね。同時に接続させる台数は、5台以上が目安です。

Q.できるだけチャネルボンディングをして広い帯域を確保したほうがいいですか?

A.ロボコンでは必要ないことがほとんどだと思います。

チャネルボンディングは、20MHzごとに区切られているチャネルを2つ、4つ......と組み合わせて使う通信方法でしたね。

たしかに、これによって帯域が広くなり、特に大容量の通信においてはより高速な通信が実現しやすくなります。一方、干渉する可能性が増えるというデメリットもあるのです。

「細い体格の人より、お相撲さんのほうががっしり立っていてびくともしない。チャネルボンディングして太くすれば電波は強くなるんじゃないか?」

こう考えたくなりますが、そうではありません。帯域が太くなるということは、それだけ何かと衝突するリスクがあがるということです。また、それによって発生する通信障害は20MHzでも80MHzでも同じです。

チャネルイメージ

一度に送れるデータの量が増えるのはメリットですが、ロボコンではロボットのコントロールにそれほど大きなトラフィックが必要なケースはありませんよね。コントロールのために、高解像度の動画を絶えず送信しているということでもない限り、干渉のリスクがあがるチャネルボンディングは有効とは言えないでしょう。

ちなみに、NTTBPが会場に設置している公式Wi-Fiはチャネルボンディングをせず20MHzのみを利用しています。ロボットとの干渉をなるべく避けるよう工夫されているんですよ。

Q.ワイヤレスマイクやインカムなど、大会スタッフが利用する無線機器は試合に影響がありますか?

A.利用している周波数帯と同じでない限り、影響はありません。

一般的なワイヤレスマイクはWi-Fiと異なる専用の周波数帯域を割り当てられているので、基本的には干渉しません。また、放送事業者に割り当てられた固有の帯域を使う機器についても、干渉要因にはなりません。ただ、機器によっては2.4GHz帯を用いているものもあります。 ロボットの操作に2.4GHzを利用している場合は干渉の可能性があります。

Q.Wi-Fiではなく、BluetoothやZigBeeを使った場合でも干渉は起こりますか。

A.利用する周波数帯が被ってしまえば、通信規格に関わらず干渉します。

挙げていただいているWi-Fi、Bluetoothなどはもちろん、どんなものでも周波数が被れば干渉します。

ただし、Bluetoothの場合だと、Wi-Fiと違い2.4GHz帯の中でいっぱい周波数移動が行われます。 車で例えると、常にものすごい速さで車線変更が行われている状態です。そのためまっすぐ走っている車(Wi-Fi)に比べると、反復横跳びのように動くバイク(Bluetooth)はぶつかりづらく、仮にぶつかってもすぐに車線変更が行われるので干渉しづらい通信規格ではあります。

とはいえ、2.4GHz帯はモバイルWi-Fiルーターにもよく採用されているので、事前の環境調査も困難です。また、無線通信だけでなく、電子レンジなどの工業製品などにも利用されているので、干渉のリスクが特に高い周波数帯と言えるでしょう。

Q.ロボットにルーターを設置したいのですが、どこが良いですか?

A.できるだけ高く、障害物の影響を受けにくい位置に設置しましょう。

頭上のような位置が望ましいですが、できない場合は外付けアンテナだけをロボットの高い位置につける方法もあります。

また、機体に内蔵する場合はロボットの素材なども考慮する必要があります。金属板などで囲わないように注意しましょう。

関連リンク:家のWi-Fiを邪魔しているのはこれだ! プロの解説付き
https://www.ntt-bp.net/column/blog/2021/11/post-71.html

ただ、ロボット自体の重さや費用のことを考えると、ルーターではなくWi-Fiモジュールを搭載して、アンテナだけを高いところに設置するのも一つの手段かもしれませんね。

Q.サブギガ帯(920MHz帯)によるロボット操作は可能ですか?

A.可能ですが、送信時間には注意が必要です。

920Mhz帯を利用されている学校は意外と多いみたいですね。ただ、920MHz帯の通信では、Duty比が10%に制限されているので、注意が必要です。

簡単に言うと、1時間の10%、つまり合計で6分までしか通信をすることができません。制限があるのは、1時間あたりの合計なので、0.1秒の通信を3600回でも、3秒の通信を120回でも構いません。運用にあった設定をしましょう。

試合はクリーンな電波環境で!

学生の方々の質問と回答の一部をご紹介しました。「まさにそこを説明したかった!」というようなポイントや、大人顔負けの質問もあり、私たちにとっても非常に有意義な時間でした。ロボコンに熱意を持ち、真剣に取り組むからこそ、このような質問が生まれてくるんですね。私たちとしても、これからもしっかりとお答えしていきたいところです。

今回ご紹介したものでは、特に電波の干渉に関する質問が多かったですね。ロボコンの会場で使われるフリーWi-Fiはそのような不安を極力取り除くよう考慮したうえ設置されています。しかし、会場の電波環境は、近隣の施設や、来場者の持ち込み機器などさまざまなことに影響を受けてしまいます。

電波環境は非常に繊細なものです。クリーンな環境でロボット競技が行えるよう、競技者も観戦する人も、来場する全員で持ち込み電波を控え、余計な通信を行わないなど気を付けていきたいですね。

NTTBPはこれからも未来の技術者たちの試合を支えていきます。どうぞ安心して思う存分、実力を発揮してくださいね!

関連リンク
NHK学生ロボコン2023 : 導入事例 : NTTBP|NTTブロードバンドプラットフォーム
https://www.ntt-bp.net/product/case/nhk2023.html

ロボコン会場のフリーWi-Fiはこれだ! ~人間だけでなくロボットにとってもクリーンな電波環境をhttps://www.ntt-bp.net/column/blog/2021/11/post-56.html

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