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NTTBPが心機一転! 新たに就任した社長に突撃インタビューしてみた

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2024年6月、NTTBPは約4年ぶりに代表取締役社長を交代し、新しいスタートを切りました。

新しく就任したのは加藤成晴さん。我々編集部は社内でもホットな話題となっている「新社長ってどんな人?」を明らかにすべく、社長室の奥地へ向かいました。単刀直入に、直接話を伺えないか聞いたところ......。

「いいよ~」

と想像以上に気さくなお返事が! お言葉に甘えて、さっそく突撃インタビューをさせてもらいました。

ニュースリリースや公式サイトのお知らせでは見られない、社長の思わぬ本音が聞けるかも? それではインタビューをご覧ください。

インタビューされている社長の写真

 エヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォーム株式会社 代表取締役社長 加藤成晴さん

その経歴はまさに「どこを切り取ってもワイヤレス」

Q.まず最初に、社長に就任されたことをお祝い申し上げます。まずは自己紹介をお願いします。

――加藤さん:加藤成晴です。NTTBPには会社の立ち上げから携わっていて......インタビュアーの皆さんは知っていますね(笑)8年前までNTTBPに在籍していました。

Q.はい、またお世話になります(笑)社長......とお呼びしていいですか?

――加藤さん:なんでもいいですよ。今のところ、こちらへ来てから、加藤さんと呼んでくれる方が多いかな。カトちゃんでもかまいませんよ。

Q.カトちゃんは気が引けるので、では間を取って加藤さんと......。加藤さん、改めまして、経歴について教えてください。

――加藤さん:はい、私は元々NTTパーソナルという会社の発足メンバーのひとりで、若い方はもう知らないかもしれませんが、PHSという無線通信機器を普及させようとしていました。30年ほど前ですね。

Q.もう30年ほども無線に携わっていたんですね。

――加藤さん:中学生の頃にはアマチュア無線を触っていましたから、もっと昔からかもしれません。実は最近改めてハマっていて、オンもオフも無線尽くしなんですよ。この話を始めるとこれだけでインタビューが終わるので今度にしましょうか(笑)。PHSの話に戻りますが、30年前は「電話を外に持ち出すこと」が新しい常識になり、PHSや携帯電話が爆発的に普及し始める、そんな時代だったと思います。

Q.PHS、私も使っていました。

――加藤さん:ありがとうございます。あまり知られていないのですがPHSは日本で作られた、ISDNをベースにした本当に素晴らしい技術なんですよ。なんとか世に普及させたかったんですが、この事業は失敗......と言い切ってしまうのも心苦しいのですが、大きな赤字を抱えてしまいました。結局PHS事業はdocomoに譲渡し、私はNTT東日本に戻りました。当時は光ファイバーのサービスを日本中に拡大していこうと、そういう時期だったと思います。「無線と光を組み合わせるとすごく便利に使えるよね」と、Wi-Fiの元になる技術に注目が集まったのがこの頃で、それをどう事業にしていくか考えていました。

Q.Wi-Fiの黎明期ですね。

――加藤さん:はい。当時「ノマドワーク」「ノマディック」なんて言葉が流行したように、ビジネスマン向けの「場所を選ばず働く手段」には大きな需要がありました。ノマドワーカーに「月額をいただいて無線を提供する事業」を作れないものか、と。実際に利用者の意向を調査するために、渋谷のさまざまなお店に話を持ちかけ、現在のWi-Fiのような無線装置を設置していただいたりもしていました。

Q.なるほど。Wi-Fiのサブスクみたいな感じですね。

――加藤さん:そうですね。ただ、それが事業として成り立つかは微妙なラインでした。このビジネスには光ファイバーへの設備投資が不可欠で、儲かるビジネスではなかったんです。そこで最初は、既に光ファイバーを敷設していた鉄道会社に協力をお願いして、駅に無線装置をつけてもらうことに注力しました。利用者の多い駅に、鉄道会社と折半で設備投資ができることは、双方にとってメリットがありました。このような経緯で生まれたのが、月額で無線装置を使える「無線LAN倶楽部」です。これが、公衆無線LANサービスの提供を専業として子会社化されたNTTBPの最初のサービスでした。

無線LANカードの画像

無線方式には、36Mbpsの高速通信を実現するHiSWANaも採用された。
右はNTT東日本製のHiSWANa無線LANカード

引用:LifeStyle:「NTT-BP」設立――駅で無線LANサービス
https://www.itmedia.co.jp/broadband/0207/15/ntt_bp.html

――加藤さん:ただ、同じように考える企業は多く、複数の無線装置が乱立することになります。こうなってしまうと設備としては非効率的で、電波干渉の懸念もあります。そこで、私たちは論理的にネットワークを分ける技術を用いて、無線設備を多数の事業者でシェアできるモデルをはじめたんです。

旧サービスのポスター画像

一台のアクセスポイントで複数の事業者によるサービスが展開された

Q.そのようにして、NTTBPの原型ができあがったんですね。

――加藤さん:はい。そのあと大きく躍進できたのはスマートフォンの普及によるところが大きいですね。それまでのWi-Fiは端末側にカード型の外付け機器を付ける必要があったんですが、スマートフォンはそれが標準で内蔵されていたんです。これが無線需要の強い追い風になりました。

Q.それはとんでもない事件でしたね。

――加藤さん:はい。続けた甲斐があった、と思える出来事でしたね。加えて、スマートフォンの普及に伴う形で携帯電話のパケット使用量が大幅に増えました。モバイル通信はパンク寸前で、3G回線のトラフィックをWi-Fiに逃がそうという動きが広まり、docomoをはじめ、さまざまな通信キャリアからWi-Fi設置を依頼されたんです。目まぐるしいほどに忙しくなりましたね。バスや電車のような動く場所にも、人がすごく集中する場所にも設置しました。その分、会社としても個人としても、凄まじい量と質のノウハウを得た時期だったと思います。

Q.NTTBPといえばフリーWi-Fi、というイメージを持つ方もいると思いますが、このころはまだフリーWi-Fi事業ではなかったんですね。

――加藤さん:はい。でもそうやって続けていくうちに、Wi-Fiの便利さが皆さんに受け入れられてきたんです。「それだったら」と、通信キャリア以外の、お店や施設を持つオーナーさんからもお声がけいただくようになって、フリーWi-Fi事業が柱の一つになっていきました。かれこれ15年、NTTBPで走り回りましたね。

Q.NTT東日本へのご異動後にされていたことは?

――加藤さん:NTT東日本でも新規事業の立ち上げを担当していました。農業やe-sportsに関する会社など、6、7社の設立に携わり、経営計画を立てたりして......それでようやく、今回戻ってきました。そう、「戻ってきた」感じですね。今社長に就任したというよりは「8年間手伝いがあってNTT東日本に行っていたけれど、今帰ってきたぞ」と、そんな感覚です。

インタビューされている最中の社長の写真

最前線から見続けた景色 変わったものと変わらないもの

Q.8年前、部長の立場だったNTTBPに、今社長になって帰ってきたわけですが、気持ちや意気込みはどう変わりましたか?

――加藤さん:「変わっていない」と感じています。BPの立ち上げ当時、私は役職で言えば課長でした。立ち上げというのはそれこそ、ゼロからビジネスモデルを考え、資料作りから役員への説明、渉外まで、やること尽くしです。だから誰もが役職や肩書に関わらずやれることをやっていました。社長として戻って来た今も「やれることはすべてやろう」という気持ちは変わっていません。課長だった時も、社長を任された今も、同じ船に乗った、ジョインしてくれた人の生活が、人生がある。それが倒れないように、何とかする。それは何一つ変わりません。

Q.ではNTTBPを取り巻く環境について、どう変わったと考えていますか?

――加藤さん:とにかく「Wi-Fiが普及したな」と感じます。昔は会社に説明にいくと、まず「Wi-Fiとは何か」を説明しなくてはいけなかったんです。今じゃWi-Fiは世界一普及している無線規格になり、本当にたくさんの機器に入っています。長年普及にも努めてきた身としては、嬉しい限りです。

Q.逆に「変わらないな」と感じることは?

――加藤さん:「ワイヤレスの重要性」ですね。変わらないなと言うか、むしろますます強くなった気さえしますね。今も変わらず求め続けられているな、というのを感じます。

Q.それらを踏まえて、新社長として「変えたい」と思うことはありますか?

――加藤さん:Wi-Fiは本当に身近に簡単になって、今では「誰だって」設置しようと思えばできる時代になったと思います。でも一方で、設置した人の話を聞くと「思ったような速度がでない」とか「途切れる」とか、色んな不満を持っているんですよ。完全に納得している人のほうが少ないくらい。Wi-Fiの設置ってそれくらい、しっかりやるのが難しく、手間のかかるものなんですね。だから正しく設置したWi-Fiの「本当の快適さ」を世の中にどんどんアピールしていきたいですね。

Q.Wi-Fiが過小評価されている?

――加藤さん:ポテンシャルを引き出せていないケースは多いと思いますね。調子悪いWi-Fiってなかなか改善されないんですよ。どうしていいかわからず、困るだけで終わる人もいる。つけた人に尋ねても「ちゃんとつけました」で終わってしまう場合もある。NTTBPは20年以上この技術に携わってきて、深いノウハウがあります。調査や検証をもとに調整された快適なWi-Fiの存在を、もっと世の中に伝えたいと思います。

質問に答える社長の写真

Q.NTTBPを、5年後にはどんな会社にしたいですか?

――加藤さん:今の時代は、本当にさまざまなワイヤレス技術で溢れています。NTTBPはWi-Fiから始まった会社ではありますが、もはやWi-Fiだけで生き抜くことはできません。ライフスタイルは進化して、生活のあらゆる場所にワイヤレス技術が入り込んでいます。企業はDX化や働き方改革といったさまざまな課題を抱えています。私たちは培ったあらゆる技術やノウハウを駆使してコンサルテーションを行い、無線に関連して幅広く設計も構築もオペレーションも何でも任せられる専門家集団として進化していかなくてはと思います。この培ったものを社会に使っていただいて、一緒に幸せになってもらう。その役割を担える会社になりたいですね。

Q.8年のブランクが全く感じられず、ずっとNTTBPにいた方にインタビューをしている気分です。

――加藤さん:そうでしょう(笑)NTT東日本にいる間もNTTBPのことはずっと見ていましたよ。

忍耐を知り、何もない場所から作り出し続ける

Q.ご自身の得意な分野について教えてください。

――加藤さん:新規事業の立ち上げに携わることが非常に多かったので、まったく何もないところから何かを作り出していくことは慣れています。未知に踏み込むわけですから、失敗はつきものです。けれど、失敗にめげず、世の中の流れを待てるようになったと思います。

Q.世の中の流れを待つ......忍耐力があるということでしょうか?

――加藤さん:PHSを普及させようと力を尽くした時に学んだことなんですが、どれほど素晴らしい技術であっても、世の中の流れなどの些細なことで開花できないことが、どうしてもあるんです。けど、新規事業というのは自分が諦めた瞬間に道が絶たれてしまうんですね。信じて、耐えることは時として非常に重要だと思いますよ。

Q.信じて耐えた先にいい結果が待っている?

――加藤さん:NTTBPって誕生してから最初の9年間って赤字だったんです。でも、当時のNTTの経営層の方たちは「やらせてみよう」と待ってくれました。そうこうしている間に、さまざまなデバイスの中にWi-Fiが組み込まれ始めました。止めずにいたから、ここで前に行けたわけです。待ったからと言ってうまく行くわけじゃないけど、誰かが信じてあげなきゃ進めないですから。

Q.変化の時代にあって、今のまま進むのか、変わっていくのか。その判断が難しいと感じています。仰ったように、今NTTBPは「忍耐」すべき時なんでしょうか?

――加藤さん:忍耐も必要ですね。でもチャンスであることも間違いありません。今苦しいのは産みの苦しみだと思うんです。新しいビジネスモデルへ転換していくため、今どうしても苦まなきゃいけない。それを感じているんだと思います。ある意味、思い切って断捨離しなければいけないこともある。けれど、だからこそ、これからもっと色んなことができるはずです。忍耐は必要ですが、待つ時ではないと思います。

Q.受動的ではいけないということですね。良い変化をしていくために、今のNTTBPに求めることは何でしょうか?

――加藤さん:先ほど言ったように、Wi-Fiを設置するだけならハードルは著しく下がりました。けれど、例えば数万人が高密度な範囲で同時に接続するような高い要求に応える深いノウハウがNTTBPにはあります。その技術や専門性をさらに追及し、高いスキル水準のメンバーをもっと増やさなくてはいけないと思います。

Q.個人レベルでスキルを磨いていく?

――加藤さん:まずは各々が興味を持って、もっと専門性を高めて欲しいですね。私との対談や、社内外の第一人者による講演などを組み「勉強してみようかな」という気持ちになってもらいたいです。そのために、勉強したいと思ったときに勉強できる環境は整えてあげたい。

Q.最後に、この記事を読んでいるコラムの読者に伝えたいことがあればどうぞ。

――加藤さん:ワイヤレス技術だけでなく、ここ20年のテクノロジーの進化は凄まじく、さまざまなことがゼロから実現できる世界になっています。皆さんの頭のなかにある「やりたい」けど「できるかわからない」こと、どんどん相談してください。NTTBPにはWi-Fiだけでなく、ローカル5GやLPWAなども含めた無線に関する、経験に裏打ちされた知見があります。また、私たちはNTTBPのリソースだけで不足でも、NTTグループと連携して力を注ぐことができます。実現のために必要であれば、他社と協力することも惜しみません。すべてを使ってお客さまにとって最適な提案ができるはずです。どうぞ今後とも、よろしくお願いします。

新しい社長はどんな人? インタビューを終えてわかったのは、熱い思いを持ち、自身も無線に関する経験や知識も豊富な、おしゃべり好きなおちゃめな人だと言うことでした。ここに書ききれない思いもたくさんあるそうで、今後は本コラムにも登場いただく予定です。新社長ともども、これからもNTTBPをよろしくお願いしますね。

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