この記事は【後編】です。まだご覧になっていないかたは【前編】からお楽しみください。
関連記事:【前編】「Wi-Fiが速い」って結局どういうこと? 速度を決める要素を並べてみた
前回の記事で、「インターネットの速さ=Wi-Fiの速さ」と言うことはできず、実はさまざまなWi-Fi以外の要因が通信速度に関わっていることがわかりました。
今回は実際に「Wi-Fiそのものの速さ」が関わることについて見ていこうと思います。
通信規格について
Wi-Fiの通信規格は時代とともにアップデートされていて、新しいほど速い通信速度が実現できるようになっています。
このWi-Fiルーターも「最新」で「高速」って聞いて買ったんだよな。
じゃあきっと、新しい通信規格に対応しているルーターなんでしょうね。購入時の外箱などにも必ず書かれているので、確認してみてくださいね。
店長の買ったWi-Fiルーターは「Wi-Fi 6E」で最新のものでした。これは理論値で最大9.6Gbpsもの速度が出せる規格です。
すごい! 私の家のやつもそんなに古くないと思ってたけど802.11n......ってことは「Wi-Fi 4」か! 意外とマメにアップデートされてるんだなぁ。
「Wi-Fi 4」は数年前の主流で、最大通信速度は600Mbpsです。現在の最新規格はWi-Fi6。拡張版のWi-Fi6Eも登場したことで、最大通信速度は9.6Gbpsにまでなりました。比較すると、Wi-Fi4では物足りなく感じますね。
関連記事:Wi-Fi6E、IEEE 802.11ah (Wi-Fi HaLow)がそれぞれ日本国内で利用可能に。新時代のWi-Fi規格https://www.ntt-bp.net/column/blog/2022/09/post-96.html
「通信規格」が変わるとなぜ速くなるの?
大きな違いは3つあります。
1.変調方式の高度化
ここで言う「変調」とは、電波を情報通信に適した形式に変換する技術のことです。この技術が高度になることで、より効率的に通信を行うことができるようになります。
2.複数のアンテナによる同時送信
複数のアンテナで同時に情報を送る技術が進歩し、より効率的に情報が送れるようになります。
3.利用周波数拡大
使う「帯域」が拡がったり、周波数帯をまとめて一つの大きな通信にする「チャネルボンディング」の幅や、そのやり方が変わることです。この変更によって、より広くチャネルを使えます。
電波の強さだけではなく、その使い方でも「Wi-Fiの速さ」を引き出しているんですね。
基本的には新しい通信規格のほうが高速ですが、使うためには「Wi-Fiルーター」と「端末」の両方が対応している必要があります。たとえ通信規格が違っても下位互換するので利用は可能ですが、古い規格の方に合わせられてしまうので本来の実力は引き出せません。
電波状況について
電波状況の良し悪しも「Wi-Fiの速さ」に関わる大事な部分だね
知ってる! 遮蔽物があると、電波に影響が出ちゃうのよね。
この図のように、電波に影響する遮蔽物があると通信は遅くなってしまいます。
そのため、アクセスポイントはできるだけ障害物に阻まれにくい天井などに設置するのがおすすめです。
障害物だけじゃない、電波の環境にはいろんな配慮が必要なんだよ。
電波は遮蔽物だけでなく距離でも減衰します。例えば一般的なWi-Fiルーターで届く距離は、見通しのよい場所でもせいぜい数十メートル程度です。
ならば電波を強くすればいいかと言えば、そうでもありません。例えば、音も大きすぎると聞きにくくなるように、電波も適切な距離で設計しなければ使いにくくなってしまいます。また、電波法の定める基準があり、電波は勝手に一定以上強めることはできません。一般に広く流通させるためには、総務省の定める基準をクリアした証である「技適マーク」を取得する必要があります。
関連記事:技適マークって何? スマホやパソコンにある郵便っぽいマークの正体を聞いてみたhttps://www.ntt-bp.net/column/blog/2023/02/post-84.html
その他にも、電波は「干渉」することで本領を発揮できなくなります。
図は都内のとあるカフェで計測した電波の様子です。2.4GHz帯が明らかに混在し干渉しあっているのがよくわかります。
また、干渉するのはWi-Fi同士だけではありません。例えば、2.4GHz帯を利用している最中に電子レンジなどの同じ周波数帯を利用する機器を使うと、干渉され安定した通信ができなくなります。
電子レンジとスマホならまだよいのですが、5GHz帯では航空無線や気象レーダーと干渉する可能性があります。なにげないWi-Fi利用が航空無線や気象レーダーに影響しては大変です。それを回避するために、周波数帯によって屋外利用が禁止だったり、干渉を回避するためのシステム、DFS(Dynamic Frequency Selection)の影響で通信が一部制限される場合もありますね。これも「Wi-Fiの速さ」に関わるひとつと言うこともできます。
関連記事:電子レンジでWi-Fiが切れるって本当? 実験してみた~プロの解説つき
関連記事:5GHz帯Wi-Fiの屋外利用は禁止って本当? 覚えておきたい「おそとWi-Fi」のルール
同時利用について
Wi-Fiルーターにはそれぞれ、1台につき同時にいくつの端末と接続できるかの上限があります。高性能なWi-Fiルーターほど多くの機器と接続できる場合が多いですが、台数の上限を超えていると、そもそもWi-Fiに接続すらできなくなります。
同時に利用できる人数の設定を増やして、一度にたくさんの機器を接続できる設定にしたとしても、同じ周波数帯を複数の人が使う場合には、先ほども登場した「チャネル」が被ってしまうことになりますね。さらに、大勢が同時に通信することで、通信回線そのものもトラフィックの増加でいっぱいいっぱいになってしまいます。「Wi-Fiの速さ」を確保するためには、余裕を持った同時接続数の確保やチャネル設計も必要です。
お店が混雑していると、「同時利用」の問題だけじゃなく、さっき説明した「遮蔽物」の問題も出てくるよ。
電波は水を通しにくい性質があります。ほとんどが水分でできている「人体」も多くなれば十分遮蔽物になるのです。混雑していると同時利用数が増えるだけでなく、物理的に電波が通りにくい状態にもなるんですね。
このお店混雑してるとこ見たことないけど......
サツキちゃん、それは言わない約束だよ!
さいごに
【前編】では、「Wi-Fi以外の要因で通信が遅くなる理由」を中心にお伝えしました。今回、Wi-Fiだけを見ても速さの要因はいくつもあることがわかりましたね。繰り返しになりますが、「Wi-Fiの速さ=インターネットの速さ」ではありません。知っておくと、「通信が遅いな」と感じたときに対処もしやすくなり、おすすめですよ。
もし「対処したいけどうまくいかない」「調べてみたいけどわからない」と思ったら、NTTBPの「Wi-Fiドック」という通信環境の診断サービスを使う、という手段もあります。複合的な調査も実施でき、しっかりとした状況把握に役立ちますよ。検討してみてくださいね。
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