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eスポーツイベントに必要な通信環境とは? 開催のポイントをプロに聞いてみた

インタビューされている専門家の写真

プロ選手じゃなくてもスポーツを楽しむように、近年、eスポーツも誰もが気軽に楽しめるものとして注目を集めています。

以前「社内イベントでeスポーツをやってみた」でもご紹介しましたが、自宅でも会社でも参加できるイベントスタイルをとれるeスポーツは多くのメリットがありました。コロナ禍で求められる新しい生活の形にも合っていて、飲み会より若手社員が積極的に参加してくれる......社内イベントだけでなく、地域の活性化にもeスポーツを取り入れる例がどんどん増えています。

そんな、ますます身近になってきたeスポーツ。では、いざそのイベントを開催することになったらどうしますか?
例えば「専用の会場」を借りるという手もありますね。実際、専用施設を使えば、安心して開催することができるでしょう。けれど、常に借りて開催できるとは限りませんよね。

そうなると一番悩むポイントは通信回線です。専用の会場を借りず、イチから自力でeスポーツイベントを準備するとしたら、どんなインターネット環境が必要なのでしょうか。

今回は、いくつものeスポーツイベント開催を手掛けてきたNTT e-Sports副社長の影澤さんに、eスポーツイベントでの通信環境作りについて教えてもらいました。

eスポーツイベントを開催するうえで大切なこと

NTT e-Sports副社長の影澤さん

NTT e-Sports副社長の影澤さん

本日はどうぞよろしくおねがいします。

――影澤さん:よろしくおねがいします。

Q.eスポーツイベントって一般的にどんな場所で開催されることが多いんでしょうか?

――影澤さん:企業が主催の場合はイベントホールなどが多いですね。自治体や地域の方の場合は、その地域でできた新しい施設などを使うことが多いです。体育館でやりたい、といった声もよく聞かれますね。

Q.ゲームをプレイする人やギャラリーの人数でも適切な施設って変わりますよね。いったい何から決めたらいいんでしょう。

――影澤さん:それにはまずは開催する「目的」をしっかり見据えるというところですね。

Q.目的ですか。ゲーム選びが先じゃないんですね。

――影澤さん:はい。使える設備や予算といったものはなかなか動かせないものだと思います。その中でどんなイベントにするかを決める軸は「目的」です。人を集めることだったり、地域の世代間交流だったりさまざまですが、目的に対するマーケティングがあって、その手段がeスポーツだということですね。「このイベントは何を目的としているか」がはっきりしていると、環境に合わせた試合形式ですとか、ゲームタイトルが選びやすくなります。

Q.なるほど。実際NTT e-Sportsさんへ問い合わせてくるお客様というのは、目的やプランを固めているものなんでしょうか?

――影澤さん:それがそうでもないんですよ。我々の会社はeスポーツを使った地域活性というものをコンセプトの1つとして持っていますので、お客様には多くの自治体様もいます。中には技術的な点は度外視なものの、メイン会場は公民館を使う、といったように場所だけ先に決まっているというケースもあります。すると、どうしても準備できる環境が限られてきます。なので、そういった条件の中でどう実現するかを調整するためにも、開催の「目的」は非常に大切な指針になるんです。

ズバリこれは気にするべき。開催前に絶対に確認すべき要素2つ

Q.確かに、使用する会場をあらかじめ指定されているパターンは多そうですね。会場にも向き不向きがあると思うんですが「最低限これは必要」というものはありますか?

――影澤さん:2つ、特に注意して確認して欲しいことがあります。それは電源インターネット回線です。
特に電源は盲点になりやすいので注意が必要です。近年は端末の稼働に必要なワット数も増えていることもあり、ゲーム機、モニター、配信用カメラ、音響、照明、などと機器を増やして行くと単純に不足することになり、ネックになりがちです。本番で実際に端末全てに電源を入れたら足りなかった、では大変ですから。

Q.計算してみたら電力が足りない、といった場合、どうすればいいんでしょう?

――影澤さん:策はありますが、一例としてプレイヤーや端末数を絞ればそれだけ電力が抑えられますよね。そうやって、対戦形式や演出を工夫・調整することで設備にあったイベントにチューンしていくことができます。「目的」さえしっかりしていれば、そういった調整も可能です。

電力を消費する多くの機器が使われている様子

Q.なるほど。ではもうひとつ、インターネット回線のほうも教えてください。ゲームに必要な回線って、何を気にすれば良いのでしょうか?

――影澤さん:一概には言えません。イベントの進行としてオンライン対戦を含めるのであればもちろん必須ではありますが、現場に来てもらって直接対戦するだけであればインターネット環境はいりませんからね。

Q.確かにそうですね!ではオンライン対戦を組み込むときに必要な条件はありますか?

――影澤さん:オンライン対戦では「安定性」はもちろんなんですが「低遅延」であることが大切です。これを疎かにすると、ゲームの勝敗を変えてしまう要因になり得るので、イベントが成り立たなくなってしまいます。最も重視すべき点です。

Q.何か目安などはありますでしょうか?

――影澤さん:ゲームのジャンルによっても全然違いますし、明確な指標があるわけではありませんが、一般に格闘ゲームならばping値は20ms(ミリ秒)以下が望ましいとされています。ping値というのは、通信が自分のゲーム機から相手のゲーム機まで行って帰ってくるまでの時間ですね。これが3桁になるとまず競技はできませんし、本格的なイベントであれば2桁でもクレームになったりするんです。

Q.回線速度が遅いと、そのping値が悪くなりやすいんでしょうか?

――影澤さん:回線速度は前提として必要ですが、ping値が悪くなる原因としては物理的な距離や区間のキューイングが原因の場合がほとんどです。このあたりは個人で調整するには限界があるかもしれませんね。

Q.十分なインターネット環境を用意できないときはどうしたらいいんでしょう?

――影澤さん:光回線も5Gもない山間部で、SIMのLTE回線だけで実施したイベントもあります。先ほどもお伝えした「目的」がしっかりしていれば、環境にあわせたタイトル選びや設計ができますよ。eスポーツと言ってもかなり幅が広いです。そのため通信品質の基準を一言でいうのは難しいのですが、その分環境やニーズにあわせた大会設計が可能なんですよ。

忘れちゃいけない「オンライン配信」用の通信環境

Q.オンライン対戦をゲームに組み込まなければ、インターネット環境って不要でしょうか?

――影澤さん:そうでもないんです。というのも「オンライン配信」で通信を使うんですよ。近年、コロナ禍などの影響もあって、配信のニーズはかなり高まっています。色々お話を伺う中でも、入場制限があることもありますし、来られない人たちにも見せようという運営側の配慮を感じることが多いです。体感ですが、お手伝いしたイベントの9割以上で配信を行っているんじゃないでしょうか。もはや、ほぼ必須の要件です。

Q.配信も、同じように回線の品質が大事なんでしょうか?

――影澤さん:回線の設備や通信環境が大事なのはゲームと一緒ですね。ただ、求められる品質の種類が違って、こちらは「安定性」「トラフィック」を重視します。「遅延」の有無よりは途切れずに配信しつづけられることが大事です。

配信のための機器の外観

必要なスペックは配信機材や画質でも異なる

Q.インターネット環境ってeスポーツイベントで大事な要素なんですね。正直繋がればよいものかと......

――影澤さん:私たちはeスポーツの会社ですが、NTTグループですので「通信」をよく知っている分、そこはシビアに考えてしまいますね。他社さんであれば、トラブルがあっても通信会社のせいにできたりすると思うんですが(笑)

インターネット環境は有線じゃなきゃだめ? Wi-Fiでもいいの?

Q.よく「ネット対戦は有線じゃなきゃだめ」という話を聞くんですが、これは真実なのでしょうか。実はこれWi-Fiのコラムなんですが......。

――影澤さん:そうですね、有線が大前提です。これはオンライン対戦でも配信でも共通して言えることです。もちろん無線でも、安定した低遅延な環境が実現できないわけではありません。ただ「遅れない」「途切れない」と保証はできないんです。実際の数値上の性能もそうですが、「物理的に繋がっている」安心感と言いますか、これで担保できている部分もあります。見えないものがあると、そこに責任を被せやすくなってしまうので、有線という保証が必要になってくるんです。

Q.Wi-Fiだけでeスポーツイベントはやめておいたほうが良いですかね......?

――影澤さん:そんなことはないと思いますよ。例えば賞金などがかかるようなシビアなところを取らなくても楽しめるパーティー要素の強いイベントならWi-Fiも充分使えます。参加者全員がスマホを持って気軽に参加できるようなイベントにするときは、Wi-Fiの方がいいですね。それに対戦や配信用以外で、来場者用のフリーWi-Fiもあると嬉しいですよね。

屋外で端末を操作する人々

屋外イベントの場合もWi-Fiは便利

Q.Wi-Fiの出番もありそうで安心しました。ゲーム機やゲームタイトルによる違いもあるんでしょうか?

――影澤さん:たとえば携帯ゲームとしても取り扱えるNintendo Switchは、無線通信を使った遊び方を念頭に設計されていますから、通信環境の影響を受けにくいゲームが多いと思います。あとは、スマホなんかもそうですね。逆にパソコンやプレイステーションのゲームは有線を想定して作られているので、有線にせざるを得ない部分があるんです。

回線の品質は自前でなんとかできる?

Q.高品質な回線が望ましいとしても、それを用意するのは難しいですよね。

――影澤さん:確かに、電源や回線の用意を自前でやるのは簡単ではないと思います。許すのであれば専用の会場を借りる、というのもイベント開催の近道だと思います。そういったところにはeスポーツイベント用に専用線を引いている場合もありますから、間違いはないでしょう。ただ、私たちからすると、専用回線は必ずしも必要ではないんです。
例えば、実際に最先端の機材でeスポーツイベントを開催しているNTT e-Sports保有の施設「eXeField Akiba(エグゼフィールド アキバ)」でも、回線は一般家庭と同じフレッツなんですよ。

施設エグゼフィールド アキバの様子

最先端のICTと機材が揃う eXeField Akiba(エグゼフィールド アキバ)

Q.一般家庭と同じフレッツでイベントもできるんですね!

――影澤さん:もちろん構築する上でさまざまな工夫がなされていますが、一般家庭と同じですよ。依頼者様の環境に合わせるノウハウ、という意味では、通信環境構築において、NTTグループは長い歴史と知見があります。NTT東西支店との連携もできますので、そういった構築はスムーズですよ。もしお困りでしたらぜひご相談いただければと思います。

関連リンク:NTT e-Sports
https://www.ntte-sports.co.jp/

目的があれば必要な環境が見えてくる

ゲームタイトルも開催形式も、イベントによって全く違うとなれば、必要な通信環境も一律同じにはできません。けれど「目的」がしっかりしていれば、ポイントを絞って適切なイベント設計ができそうですね。
もし、そのイベント設計からお悩みでしたら、まずはNTT e-Sportsさんにご相談してみてはいかがでしょうか。きっと力になってくれます。内容は決まっているけれど、通信環境構築がお悩みの時は、有線・無線にかかわらずNTTBPでもお手伝いできますよ! お気軽にお問い合わせください。

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