大人の皆さん、スマホに乗り換える前、どんなガラケーを使っていたか覚えていますか? 学生の皆さん、PHSって見たことありますか?
そんな昔の通話機が、いくつも展示されている史料館があるんです。その名も「NTT技術史料館」。NTT武蔵野研究開発センタ内にある、NTTグループの膨大な技術史料を展示している企業博物館です。
毎週木・金曜日の午後は一般公開されていて、入館料は無料。通信技術に関心がある人はもちろん、全くの初心者の方でも楽しめて、貴重な体験ができるスポットですよ。近場の有名どころは行き尽くしてしまったという博物館ファンにもおすすめです。
NTT技術史料館には「科学技術の発達上重要な成果を示し、次世代に継承していく上で重要な意義を持つもの」などに該当した資料が選定される「重要化学技術史資料(未来技術遺産)」が全部で16点もあります。かなり本格的な博物館なんです。
NTT技術史料館 ホームページ
https://hct.lab.gvm-jp.groupis-ex.ntt/index.html
場所と行き方 緑に囲まれた街はお散歩にもぴったり
NTT技術史料館は、東京都武蔵野市のNTT武蔵野研究開発センター内にあります。最寄り駅はJR中央線「三鷹駅」で、北口からバスを使えば15分程度で到着しますよ。駐車場はないので、車・バイクでは行けない点は注意です。4番バス乗場から「NTT武蔵野研究開発センタ」行きというバスもありますが、本数を考えると1番バス乗場から「北裏」か「武蔵関駅」行きに乗車して「武蔵野市役所前」で下車するのがおすすめです。
「武蔵野市役所前」のバス停からは歩いて5分ほどかかりますが、道中の緑が多く綺麗な街並みなので散歩に適していて、清々しい気持ちになります。春には満開の桜も楽しめそうです。わくわくしながら歩いてみましょう。
看板が見えたら到着です。敷地内も緑がたくさん。
武蔵野クリーンセンターと武蔵野市役所が目印になるかも!
到着! まずは広い館内を把握しよう
実際に行ってみた編集部がまず思ったことは「広い!」「濃ゆい!」ということでした。コロナ禍で体験できないブースもいくつかあるものの、それでも館内は、膨大な史料がぎっちり詰まった空間です。「技術をさぐる」「歴史をたどる」という2テーマに分けて展示されていますが、どちらもボリューム満点。年表や解説をじっくりひとつひとつ見ていたら時間があっという間になくなってしまいますから、まずは館内マップをよく見て、どこに何があるのか、興味を引いたのはどこか見当をつけてみてはいかがでしょうか。
謎解きやスタンプラリーなどのイベントを開催している場合もあります。帰り際に見つけて惜しくも参加できなかった、とならないよう、最初にチェックしてみてくださいね。
他にも、受付でガイド用タブレットを借りて散策するという楽しみ方もできますし、当日空きがあればガイドツアーを申し込むことができますよ。
展示部分2000坪オーバー。子どもから大人まで楽しめる
ボランティアガイドはNTTOBのまさに生き字引のような方ばかり! 中には有名なショルダーフォンを開発した方などすごい技術者の方もいるんですって
編集部おすすめルート・歴史に沿って歩く
フロアガイドをご覧ください。展示物が地下から時代順に並んでいることのがわかるでしょうか。ここNTT技術史料館の「歴史をたどる」展示は、地下から順に巡ることで、時代の移り変わりを感じながら展示物を見ることができます。見た目のインパクトが大きいので、初めて来た人や、家族連れにはもってこいのルートです。
まずはエスカレーターで地下1階へ。巨大な壁画がお出迎えしてくれます。
研究所の最新技術との融合で絵なのに動いているように見えるんです!
「歴史をたどる」コーナーでは、通信技術の進歩を学ぶことができます。関東大震災や太平洋戦争、大阪万博など、さまざまなきっかけで通信技術は進化していきました。その様子が壁画や等身大の人形、数々の実際の機器で臨場感たっぷりに展示されています。
映画「となりのトトロ」で見るような古い電話機や交換機も
大阪万博で登場したワイヤレステレホン。携帯電話より「子機」に近い技術だった
映画やドラマの中でしか見たことのないような古いものから、大人世代には懐かしく感じられるちょっとだけ昔の機器まで順を追ってみることができます。
どのあたりから、懐かしい!と感じるかで世代が分かりそう
「歴史をたどる」最上階には、未来を感じる「衛星通信技術」の展示があります。「技術試験衛星ETS-VI実験モデル」はまるで宇宙に行った通信衛星のレプリカのようですが、実はそうではなく、全く同じ技術が使われた双子のモデルなんです。宇宙規模の技術を間近で見られるのは嬉しいですね。NTT技術史料館は吹き抜けになっているので、このフロアからこれまで辿って来た展示物を見下ろすことができます。言葉の通り、歴史を振り返ることができる構造になっているんです。
2つの大きなアンテナがかっこいい
わからなくても楽しめるので家族連れでも安心!
歴史を知ったら、今度は技術を深堀り!
「機械の中身やモノの仕組みをもっと知りたい!」という方は「技術をさぐる」を1階から歩くのがおすすめです。こちらは「基幹ネットワーク技術」「アクセス系とユーザ機器の技術」「コンピュータとモバイルの技術」というテーマで各階ごとに体系的に展示されています。技術者でも満足できる深く細やかな解説と展示は、企業博物館ならではです。物理層からアプリケーション層まで、幅広い技術を取り扱っていて、しっかり見ると心地よい脳の疲労を感じられるはずですよ。
難しいことはちょっと苦手という方でも、大人世代にはぜひ行ってみてほしい場所があります。3階の「Iコーナ モバイルネットワークの技術」です。ずらりと並んだ歴代の携帯電話のコーナーでは「あれ持ってた!」と盛り上がること請け合いです。「あの電話使ってた時、付き合ってた彼女はどうしているかなぁ」なんてことまで一緒に思い出すかも。コミュニケーションツールである電話の思い出は、そのまま誰かとの思い出かもしれませんね。
あの機器で夜中に長電話した相手が、現在の夫です
Wi-Fiについての展示ももちろんありました。タッチパネルでWi-Fiの歴史をたどれるほか、過去の貴重な無線LAN機器を目にすることができます。近年、通信技術におけるWi-Fiの重要性が高まったことで追加されたそうですよ。
Wi-Fiの歴史についてはこちらのコラムでもご紹介しています。
関連記事:今と昔でこんなに違う! 黎明期と比べたらWi-Fiの成長がすごかった
https://www.ntt-bp.net/column/blog/2022/11/post-98.html
技術開発の系譜も見られる。断絶してしまった一門も......
確かに昔はカード挿してたよね(と言うと年齢がバレます)
たくさん紹介してきましたが、実はこれでほんの一部。全部を見るとかなりのボリュームになります。「どうしても時間が足りなくて見られなかった!」という人もいるかもしれませんが、ご安心ください。なんと、NTT技術史料館のホームページには、展示物に添えられているパネルがほとんど掲載されているんです。WEBでは館内ほど自由にとは行きませんが、充分詳細に知ることができます。館内では現物をいろんな角度で見て、パネルはあとでじっくり読む、そういう戦略ももちろんありだと思います。
情報が多すぎてとても1日では見切れないので、2日計画で来る人もいるみたい
いまは出来ない......けどいつか絶対体験してほしい展示
残念ながらコロナ禍の影響で、2022年11月現在、触れたり、喋ったりして実際に体験できる展示物は、休止されています。そのためここで紹介して良いものか迷ったのですが、どれも本来大変面白い展示なので、いつか復活することを願って、一部をご紹介します。見ることはできるので、ぜひ探してみてください。
いろんな珍しい電話機体験!
「デルビル磁石式電話機」と「黒電話」という、今では滅多にお目にかかれない電話を使って「実際に」通話することができますよ。さらに、電話交換手が使っていた「磁石式手動交換機」にも触れることができます。こちらも本当に動くから驚きです。しっかり繋ぐことができるでしょうか? まるで映画の中に入り込んだような気分になれるかも。
ちゃんと繋がる? あなたが電話交換手!
パラボラで「自力」通話?!
巨大なパラボラアンテナに向かって喋ることで、遠く離れた1階と3階で音声通話をすることができます。本当に小さなささやき声が遠くまで届くというので驚きです。家族や友人に秘密のメッセージを伝えるのもいいかもしれません。
マイクやスピーカーなしでここまでできる!
これらは現在一般入場では体験できないのですが、学校の社会科見学などの場合は特別に体験が可能とのことでした。特に小学校5年生のカリキュラムにあわせた見学コースは体験型のコンテンツが中心となるそうなので、学習しながら思い出作りができそうですね。
頭の片隅に入れておいて、解禁されたらぜひまた来てくださいね!
無料なのにお土産までくれちゃう太っ腹
帰りにアンケートに回答すると、もれなく通信機器にちなんだペーパークラフトがもらえます。完成させるのは結構大変でしたが、帰ってからも思い出と一緒に楽しめますね。
紙なので家に置いてもWi-Fiの電波を邪魔しません
誰でも味わえる、未知との遭遇と懐かしさ
もしかしたら、「技術史料館」という名前に、どこか固さを感じているかもしれません。けれど、実際に展示を見れば、その印象は大きく変わるはずです。
確かに内容は難しいのですが、それを忘れさせるほど丁寧に演出された展示は、わかる、わからないに関わらず楽しませてくれます。知らない世界に触れる興奮も、知っているけど忘れかけていた世界を思い出す興奮も、どちらも味わうことができます。そして、どの博物館でも言えることですが、自分で噛み砕いて知識を取り込めた時には、信じられないほど世界の解像度があがる、あの代えがたい体験を得ることもできます。
毎週木・金曜日の午後が一般公開で、入場無料です。平日の午後、ふと空いた時間があったら、足を運んでみてはいかがでしょうか。
NTT技術史料館 ホームページ
https://hct.lab.gvm-jp.groupis-ex.ntt/index.html