Wi-Fiコラム Wi-Fiをもっと楽しくするWEBマガジン

家のWi-Fiを邪魔しているのはこれだ! プロの解説付き

48_08.jpg

家のWi-Fiの電波が悪い場合は電波を強くする工夫より、Wi-Fiルーターの置き方を工夫するということが大切、ということを前回の記事ではお伝えしました。

関連リンク:アルミホイルでWi-Fiの電波は強くなるのか、実験してみた! プロの解説付き
https://www.ntt-bp.net/column/blog/2021/11/post-54.html

S:私の家、まだWi-Fiが遅いんですよ!

C:えー、ルーターの前に鉄板でも置いてるんじゃないの?

S:たしか金属は電波を反射するから、もし目の前に置いたら電波の邪魔になるってことですよね? 鉄板は無いんですけど......

C:うーん、じゃあ他に家の中のものだと、具体的にどんなものが邪魔になるのかな?

編集長:試してみたらいいじゃない。

ということで今回は家庭にある身近なもので、電波の障害になるもの、ならないものを実験してみました。実験結果はNTTBPで電波技術に詳しい「内神田博士」に解説してもらいました。

  1. どんな障害物だと影響が大きい? 家の中のもので実験してみよう
  2. 【影響レベル:低】Wi-Fiにほとんど影響のないグループ
  3. 【影響レベル:中】Wi-Fiに少し影響があったグループ
  4. 【影響レベル:高】Wi-Fiに影響があったグループ
  5. 家のWi-Fiルーターはこんな場所に置こう!

測定と結果の表記について

※この検証実験は、日時・場所・計測端末は同一条件にて実施しています。

アクセスポイントは、無指向性の業務用のタイプを使用しています。見通しのよい会議室で、Android端末スマートフォン4台を用意し、無料のアプリで電波強度を測定しました。
アクセスポイントからの距離は40cmから8mの間で複数個所で測定しています。
電波は「-○dBm(マイナス○デシベル)」という表記をしますが、数値が大きいほど(数値の絶対値が小さいほど)電波は強くなります。つまり「-40dBm」と「-70dBm」だと、「-40dBm」のほうが電波は強い、ということになります。
本記事では「実験結果を読み解くのは苦手」という方にも分かりやすいよう、測定結果は各地点、各端末の結果の平均値を元に、電波強度への影響をおおまかに3つのランクにわけて紹介しています。

どんな障害物だと影響が大きい? 家の中のもので実験してみよう

ここからは家庭によくあるものから16種類をチョイスし、電波の邪魔になるものを調べてみました。
電波が回り込まないように、前回の実験で作ったアルミオーブンを使い上下左右と背面に電波が飛びにくい環境を作ります。

47_05.jpg

空いている一面の前に障害物を置いて、その障害物の先にあるスマートフォン端末の電波強度に影響があるかを調べました。

48_01.jpg

編集長:おいおい、君はずいぶんでかいボトルで焼酎を飲んでるなぁ。

S:それは私じゃなくて、事業部のボスのです。私はハイボール専門なので!

【影響レベル:低】Wi-Fiにほとんど影響のないグループ

48_02.jpg

編集長:このグループは全く影響がなかった、と言っていいものだね。

S:主に布製品やカラのペットボトルですね。

C:「風」は影響ないのか。めちゃくちゃがんばってあおいだのにー。

S:Wi-Fiルーターってかわいくないんで、この実験みたいにぬいぐるみで隠しちゃおうかな。

編集長:真面目な話、電波には影響ないけど、電化製品だからほこりや熱がたまったりすると危険だから、やめたほうがいいよ。

<解説>布、プラスチック、紙などの素材は電波に影響を与えにくい

金属などと異なり、布やプラスチック、紙などの素材は電波を透過します。そのため電波の進路上にあっても、電波の強さに影響をあたえる可能性は低いです。

47_07.jpg

ちなみに「風」も影響はありません。電波は波ですが、空気を震わせているわけではないためです。

【影響レベル:中】Wi-Fiに少し影響があったグループ

48_03.jpg

編集長:このグループは若干電波が悪くなったグループだね。

C:さっきの「モニター(液晶テレビ)」 は全く影響なかったのに「ノートPC」は影響あるんですね? 素材が違うのかな。

<解説>電波は障害物を回り込む。壁を作って完全に遮断してしまうと回り込めなくなって電波が伝わりにくい

この場合は素材ではなく、形の違いかもしれませんね。ノートPCもモニター(液晶テレビ)も同じように液晶パネルには金属が使われていますが、大きく違うのはアクセスポイントを完全に隠してしまっているかどうかです。

48_04.png

多少の隙間でも電波は通りますので、PCやテレビのような金属を含む障害物であっても、ある程度の隙間があればあまり心配する必要はありません。ただし、壁のように広い範囲で電波の進路をふさいでしまうと話は別です。Wi-Fiルーターを設置するときは、金属を含む素材で電波の進路をふさがないようにしましょう

S:「まんが」も気になりますね。紙って影響なかったような......

C:たしかに。あとCDやDVDもたしかプラスチックじゃなかった?

<解説>影響の少ない素材でも「厚さ」や「幅」があれば邪魔になる

たしかに「紙」や「プラスチック」は電波に影響のない素材です。でもこの実験のように厚い壁のようにしてしまうと影響が出てきますよ。

48_06.png

電波に影響の少ない素材であっても、障害物があれば少しずつ電波は減衰します。それに、一見影響のない素材に見えても、少しだけ水分を含んでいたり、影響のある素材が含まれていたりすることもあります。CDなどは一部に金属が使われていますからね。

まんがやCD・DVDといったものは実際の生活でも1つ2つではなく、いくつもまとめて置くことが多いものですよね。本棚やケースの後ろなど、隠れるような場所にWi-Fiルーターを置くのは、遮る素材が何であれおすすめはできません。

【影響レベル:高】Wi-Fiに影響があったグループ

48_05.jpg

S:なるほど、5つのうち4つはアルコールとアルコール好きの人、ですね。

編集長:正解! ってそんなわけないだろ。君は今まで何を聞いてたんだ。アルミ缶は「アルミ」、つまり金属だからだよ。

S:でも焼酎ボトルや編集長は? 酒関係じゃないですか!

C:いやいや、今回は焼酎ボトルの中身は水だから......。それにしても編集長、めちゃくちゃ障害物になってますね。鎖帷子(くさりかたびら)でも着込んでるとか?

編集長:私は忍者じゃないんだよ、服はいたって普通だよ。

<解説>水は電波を伝えにくい

水は電波を減衰させる素材の代表的なものです。人体は60%以上が水と言われているため、十分電波の障害になります。

水は金属とともに、気をつけるべき素材の一つです。金属と異なるのは、反射はせず減衰してしまうこと。
人体も水分量が多いため、電波に影響します。Wi-Fiスポットが混雑しているとたくさんの人に阻まれて電波はどんどん弱くなってしまうのです。こういった場所では人間の身長より上の位置にアクセスポイントを設置するとよいでしょう。

48_07.png

S:あとは、電子レンジですね。これってテレビとか他の家電とは違うんですか?

編集長:家庭の中で一番電波に影響を与える可能性があるのが、実は電子レンジなんだよ。

<解説>電子レンジで使っている電波はWi-Fiと同じ周波数帯のため干渉する

電子レンジでものを温めるためなどに使われている電磁波の周波数帯は2.4GHz。実はWi-Fiと同じなんです。そのため電子レンジがONの状態だと、干渉してWi-Fiが途切れたりすることがあるんですよ。

電子レンジで使われる電波は、機器から漏れないように設計はされているものの、Wi-Fiと比較すると非常に強い電波のためWi-Fiの電波に影響が生じてしまいます。そのため、Wi-Fiルーターを電子レンジの近くに置くのはやめましょう。

また、一般的なWi-Fiルーターでは2.4GHzと5GHzの周波数帯のいずれも利用できるようになっていることが多いので、キッチンなどでは5GHz帯を利用するとよいかもしれませんね。
ちなみに、2.4GHz帯は他にもBluetoothなどに使われているんですよ。

編集長:私の友人が昼食を作っていたらリモート会議中の旦那さんの画面が乱れ怒られたって言ってたな。

C:それ、まさにこの電子レンジではないでしょうか。5GHz帯のWi-Fiに切り替えをおすすめしたいですね。

結論:家のWi-Fiルーターはこんな場所に置こう!

前回の記事とあわせると、Wi-Fiについてこのようなことが分かりました。

  • 金属は電波を反射し通しにくい
  • 水は電波を伝えにくく、減衰させる
  • 障害物があっても電波は回り込む
  • 紙や布、プラスチックは影響が少ない
  • 影響が少ない素材であっても、「厚さ」や「幅」がある壁のようになると電波は伝わりにくくなる
  • 電子レンジは電波干渉や電波の乱れを起こす

では、家の中だとどこに置くのがよいのでしょうか。

Wi-Fiルーターは隠さない。見通しのよい高いところに

まずは障害物がない場所がいいですね。それに、電波は上から下方向のほうが流れやすい特徴もあります。そのため、周りに遮るものがない棚の上などがおすすめですよ。

ご家庭では壁付けコンセントの位置やLANケーブルの配線などから、低い場所に置かれていることも多いのではないでしょうか。1つ1つは大した障害でなくとも、たくさんの障害物に阻まれたり、人体が邪魔になることもあります。置く場所で電波がよくなることもありますので、ぜひ試してみてくださいね。
また、アンテナで方向を絞っていなければ、通常の電波は同心円状に広がりますので家の中央に置くのもいいですね。

おすすめの場所

  • 棚の上など、高い場所
    ※ただし、あまりにも高い場所に置くと、天井などが新たな障害となる可能性もあるので注意が必要です。

避けたほうがよい場所

  • 電子レンジの近く
  • 水槽の後ろや金属の棚など電波を通しにくいものの近く
  • 本棚の後ろなど、Wi-Fiルーターが隠れてしまうような場所

S:確かに、Wi-Fiルーターを棚の後ろの床に置いてましたね。置く場所変えてみます!

編集長:まずはそうしてみなさいな。

C:今回の実験って、特別なものは何も用意していなくて家庭でもできる内容ですね。

編集長:お子さんの自由研究とかにも良いかもしれないね。

電波の特性を理解すると、Wi-Fiルーターの置き場所や使い方もわかってきますね。
W-Fiコラムでは今後も面白くてためになる、電波のあれこれをお伝えしていきたいと思います!

コラムトップへ戻る

RELATED POSTS関連記事

PAGE TOP