フリーWi-Fiはどうやって設置してるの? 技術者が語る構築のこだわりから最新事例まで
日本全国津々浦々で見かけるフリーWi-Fiスポット。そんなフリーWi-Fiがどのように作られているのか、みなさんはご存じですか? 設置などの構築に関わる裏側の部分は、あまり知られていないのではないでしょうか。
そこで今回は自治体や交通機関、商業施設やスタジアム、イベントなどの短期利用のWi-Fiまで多岐にわたるWi-Fi設置・構築を担当するNTTBPのWi-Fi設置技術者の4名にインタビューしてきました。大規模案件を中心に手掛けるSさん、Cさん、Eさん、そしてFさん。私たちが日ごろ使っているフリーWi-Fi構築の裏話や最新事例について聞きました。
- フリーWi-Fiが使えるようになるまでにはどのくらいかかるの
- 実は外観にもこだわっている。アクセスポイント設置工事の裏話
- 最近のWi-Fiスポット事情
- 1日で設置完了! イベントWi-Fiのスピード設置
- NTTBPのフリーWi-Fiについて
フリーWi-Fiが使えるようになるまでにはどのくらいかかるの
Q.あらゆるスポットに設置工事をしてきた皆さんにインタビューできるまたとない機会なので、今回はWi-Fi利用者を代表してガンガン質問させてください! フリーWi-Fiを設置するには、まず何から始めるのでしょう?
――Sさん:まずは、私たちのような通信事業者が提供しているクラウド型のWi-Fiと量販店のWi-Fiの違いを説明してご理解いただくところからはじめます。それから、Wi-Fiオーナーさまのご希望や状況をヒアリングして、サービス仕様を決めていきます。仕様が固まったら、工事の準備に入ります。
Q.仕様とは具体的にはどんなことでしょう?
――Sさん:まず一番はそこに来るお客さまに、どこでWi-Fiを利用してもらうかです。もちろんすべてをカバーできればそれがベストですが、それだとお金がかかりすぎてしまいます。なので、フリーWi-Fi設置の目的は何なのか、サービス利用対象者は誰なのかをお伺いして、施設の図面などを元に予算にあわせて必要な場所を絞っていきます。
――Fさん:外国人観光客の急増や災害の増加などを受けて、国も助成金を出すなどしてフリーWi-Fiを促進してきました。こういったものを活用する際に、観光振興の助成金の場合は人気の観光スポットに、防災の助成金の場合は避難所になる公民館などに、といったように目的によって設置場所が限定される、といったこともあります。
――Cさん:他にも、利用時間や1日の上限回数などの利用条件や、利用登録画面のデザインなど、細かい部分を合わせます。このコラムでもカフェオーナー向けの記事があると思いますが、導入までの流れはほとんど一緒ですよ。
関連リンク:【まとめ】お店にフリーWi-Fiがやってきた! ~おさえておきたい設置のポイント
https://www.ntt-bp.net/column/blog/2021/10/post-58.html
Q.設置までに期間はどれくらいかかりますか?
――Sさん:うーん、そのスポットの規模感にもよるので一概にこのくらい! と断言できないのですが。私たちが担当しているような、自治体など比較的大規模なWi-Fiオーナーさまの場合は、仕様を合わせるところだけで約2か月はかかりますね。工期は約3か月といったところなので、トータルすると5か月くらい、半年以上かかるところもあります。
実は外観にもこだわっている。アクセスポイント設置工事の裏話
Q.アクセスポイントを設置する際の裏話などあったら教えてください!
――Cさん:屋外に設置するときなどは、特殊な外壁など物理的につけづらいものもありますし、環境にも左右されますね。例えば温泉街や海沿いなどは、とにかくサビとの戦いです。アクセスポイントに特殊塗装をして、塩害を防ぎます。自然が多いところだと、鳥や虫などが巣をつくっちゃうこともあるんですよ。アクセスポイントってあったかいから(笑)。
――Eさん:屋内だと、ミュージアムなどは工夫が必要ですね。天井がかなり高いでしょ。でもバケット車(高所作業車)なんてもちろん入れることはできない。そんなときは、屋内用の電動クレーンを別途レンタルする必要があったりするんです。
屋内高所作業の様子
Q.なるほど、いろんな苦労が......
――Sさん:ですね。あと、色についても実は結構こだわっているんですよ。アクセスポイント自体の色はもちろん、LANケーブルの色もWi-Fiオーナーさまによっては気にされますから。景観配慮が求められる国立公園ならブラウンを基調にします。建物の外壁などご要望の色にあわせて、アクセスポイントに塗装を行うこともあります。でも、カラーチャートを持って行っても、建物側も良い感じで劣化しているので、ピッタリその色を合わせるのがまぁ大変で。いつも悩みますね(笑)。
壁の色に溶け込むアクセスポイント
最近のWi-Fiスポット事情
Q. 最近は建物だけでなく、バスや新幹線などの乗り物にもフリーWi-Fiが増えているイメージなのですが。
――Eさん:ここ2~3年で乗り物系は増えましたね。当社でも新幹線をはじめ、電車やバス、船舶などに設置しています。
Q.私も利用してますが乗り物の中で使えるのは嬉しいですね。ほかに最近増えてきた事例などはありますか?
――Sさん:建物内だけでなく、駐車場などの屋外もエリアカバーしたいというWi-Fiオーナーさまが増えましたね。災害が多かったせいもあり、避難所だけでなく、車中泊避難を想定した駐車場の整備が進んでいる自治体も増えているのだと思います。
――Fさん:コロナ交付金を活用し、Wi-Fiをワーケーションスペースなどにして活用するという取り組みをしている自治体や企業もあるんですよ。まだ数は少ないですが。
Q.なるほど! 時代にあったWi-Fi提供をされているんですね。
――Cさん:フリーWi-Fi以外だと、限られたエリアを無線化して、"無人化"のビジネス、例えば農業IoTや工場の業務に活用するというケースもあるんですよ。その場合は、Wi-Fiだけではなく、ローカル5Gといった新たな無線サービスを使ったりもします。
1日で設置完了! イベント用Wi-Fiのスピード設置
Q.建物に常設しているWi-Fiサービスだけでなく、イベントでの短期利用のWi-Fiもありますよね。イベント用のWi-Fiってなにか違いがあったりするんでしょうか?
――Sさん:設置している機器や回線などにはそこまで大きな違いはないですね。違うとすれば設置方法ですね。イベントなど限られた期間でのWi-Fi利用の場合は、安全性を重視しつつ、すぐ取り外せるように仮設置の形にしておくんですよ。設置するにも撤去するにも時間が限られているので。
屋内でのイベントWi-Fi施工の一例
――Eさん: とにかく事前準備をしっかりやって、設置工事は1日で終わらせる工事が結構多いかもしれません。前日までなかったものが一晩でパッとできることから「一夜城Wi-Fi」なんて呼ばれたりもしているんですよ。
Q.「一夜城Wi-Fi」! それはすごいですね。なんだか大変そうですが......
――Fさん:とにかくイベントは朝の準備が超絶早い! それに急ピッチで準備をしているのは我々だけではないので、いろいろなことが起こります。とあるイベントで「ここにWi-Fi設置して」って言われて、実際に行ってみたらそのプレハブが無いなんてこともありましたよ(笑)。
屋外でのイベントWi-Fi施工の一例
――Eさん:あと、いろんなモンスターをゲットし育てるあの有名アプリの限定イベントで対応した、砂丘でのアクセスポイント設置とかもしびれたね。
Q.砂丘!? そんなところにもWi-Fiってつけられるんですね。
――Eさん:設置には苦慮しますがつけられますよ。Wi-Fiスポットを作るにはアクセスポイントに光回線をつなぐ必要があります。砂丘の真ん中には光回線のケーブルはありませんから、別の手段をとる必要があります。あの時は、ミリ波という技術をつかって無線を中継させたんですが、ミリ波はエリアの形状やアンテナの向きなどがかなり重要なので、角度が少しでもズレるとだめなんです。それが砂丘だと一晩で変わるので前日の計測情報も当てにならない。さらにアンテナの三脚に砂がかんで、何台か壊れてしまうなんてこともありました。
Q.当日にならないと分からないこともたくさんあるんですね。
――Fさん:イベントだと、前日までは安定してWi-Fiが利用できていたのに、本番当日に、出展者の方や来場されたお客さまそれぞれが、ポケットWi-Fiルーターを持ち込むことで、電波が混線してつながらなくなってしまう、ということもあります。そういった場合には、当日に急遽電波の調整や設定変更を行うこともありますね。
関連リンク:一夜城Wi-Fi - 短期利用可能な高品質Wi-Fi|Plus One Mall
https://www.ntt-bp.net/product/service/ichiyajo.html
Q.なんだか大変そうですが、簡単に設置する方法ってないでしょうか。
――Cさん:簡易に設置するなら「キャリーバッグWi-Fi」というサービスもあります。キャリーバッグ型のアクセスポイントなんですけど、回線工事も電源も不要で、そこにポンと置いておくだけで、もうフリーWi-Fiが使えます。何百人も同時に接続するようなイベントには不向きですが、時間も手間もかかりません。
――Fさん:コロナ禍前のことではありますが、寄港する豪華客船をおもてなしするために岸壁(港)にキャリーバッグWi-Fiを複数台設置したんですよ。その船は値段の高いランクの部屋だけでしか無料Wi-Fiが使えなかったこともあり、すごく喜ばれました。
関連リンク:キャリーバッグWi-Fi|Plus One Mall
https://www.ntt-bp.net/product/service/carrybag-wifi.html
キャリーバッグWi-Fi
NTTBPのフリーWi-Fiについて
Q.では、NTTBPのWi-Fiの強みってどういったところでしょう?
――Sさん:設置工事の品質と安全面(落下防止策など)はしっかりやっています。あとは通信品質やインターネットセキュリティの面ですね。ネットワークに関しても、保守・メンテナンスはしっかりしていますし、クラウドでの対応ができるので、遠隔で迅速にサポートできます。また、全国のNTTグループと連携できる体制が整っているので、安心してお任せください。
――Cさん:あとは、災害時には「災害モード」と呼ばれる有事専用の利用画面を用意していますが、発災時に自動切替できる機能もあります。運用面でも使いやすいと思いますよ。
――Fさん: 当社が提供しているアプリ「Japan Wi-Fi auto-connect」での連携も強みかも知れないですね。自治体などのWi-Fiオーナーさまからは結構ご要望も多いんですよ。
Q.では最後の質問になるのですが、フリーWi-Fiの設置を検討されているWi-Fiオーナーさまへ一言ずつお願いします。
――Fさん:まずは、「Wi-Fiをつかって何をしたいか」をしっかり伺わせてほしいですね。「Wi-Fiがあれば......」のその先にある課題の解決に私たちは一緒に寄り添います。
――Sさん:どこでもWi-Fiを使えるようにしたいというのは、もちろん最高ではあるんですけど、運用費用はそれだけかかります。"スポット"をどう考えるのか。戦略的にどこで使ってほしいのか、を一緒に考えましょう。
――Eさん: NTTグループには施設の規模や予算にあわせて、手軽にはじめられるようにパッケージングされたタイプをはじめ、さまざまなWi-Fiサービスのラインナップがありますので、気軽にご相談くださいね。
――Cさん: みんなにほとんど言われちゃったなー(笑)。当社はWi-Fiオーナーさまのサービス向上を全力でサポートします! 以上!!
今回のインタビューでは、私たちが日ごろ利用しているフリーWi-Fiの設置に関する内容をたっぷりご紹介しました。NTTBPでは、Wi-Fiオーナーさまのご要望やケースにあわせてフリーWi-Fiをはじめさまざまなワイヤレスソリューションのお手伝いができます。もし、ご興味がありましたら、NTTBPインフォメーションデスクまで、気軽にお問い合わせくださいね。